元サッカー日本代表・佐藤寿人氏 ゴールを量産する秘訣とは

ラジオプロデューサーの石井玄氏がパーソナリティを務めるポッドキャスト番組『滔々話』に、元サッカー日本代表の佐藤寿人氏がゲストとして出演。Jリーグ得点王やMVPなど輝かしい経歴を持つストライカーが、プロキャリアのスタートから現在に至るまでの知られざる苦悩や秘話を明かした。

プロ入り直後の知られざる苦悩

ジェフユナイテッド市原（当時）のユースからトップチームへ昇格した佐藤氏だが、プロの世界は甘くなかった。最初の契約交渉を振り返り、「他の同級生18歳でもらってる金額の、僕はゼロ1個少なかったのね」と、内部昇格であるがゆえの厳しい金銭事情があったことを明かす。

それでもプロとしてのキャリアが始まる喜びから、「『いや、これちょっと金額が』って言えなくて、そん時はもう『分かりました』っていうので」と、当時の心境を語った。

さらに、年代別代表の活動でチームを離れている間にポジションを失うという不運にも見舞われた。出場機会を求め、J2のセレッソ大阪へレンタル移籍するも、そこでも分厚い選手層に阻まれ苦戦を強いられる。

「プロ3年目のシーズンだったんで、『俺もう3年終わるな』と。『じゃあもうもしかしたらクビかもしれない』って」と、キャリア序盤にして引退の危機に瀕していたことを打ち明けた。

仙台でのブレイクと広島での黄金期

セレッソからは実質的な戦力外通告を受けたものの、ベガルタ仙台から声が掛かったことが大きな転機となった。仙台では運も味方したという。

「3番手のフォワードとしてほしいって言われて行ってみて、1番手2番手の選手が必ずどっちかが怪我する」という状況で巡ってきたチャンスを確実に掴み、J1でシーズン9ゴールを記録。見事なブレイクを果たした。

その後、サンフレッチェ広島へ移籍すると、その才能は完全に開花する。移籍1年目から結果を残し、2012年には現日本代表監督の森保一氏のもと、シーズン22得点を挙げて得点王とJリーグMVPをダブル受賞。チームを悲願のリーグ初優勝に導き、名実ともに日本を代表するストライカーへと上り詰めたのである。

日本代表での経験と名将たちとの出会い

広島での大活躍を引っ提げ、日本代表にも定着。番組ではジーコ監督とイビチャ・オシム監督という、対照的な二人の指揮官の下でプレーした経験にも言及した。

「（ジーコ監督は）サッカー楽しく。みんなファミリーだみたいな感じで。すごい楽だった」と振り返る一方、オシム監督については、「厳しくやってくれた方が、まあ結果、結果論だけど、そう合ってたんだな、今思うと」と分析。指導法による国民性の違いについて私見を述べた。

また、双子の兄・佐藤勇人氏と共にピッチに立った試合のエピソードも披露。父が観戦に訪れていた試合で、アディショナルタイムに途中出場すると、わずかな時間でゴールを決めたという。「たまたま点取れて、一番なんかいい終わり方。時間短いけど」と、家族の前で見せた奇跡的な一撃を懐かしんだ。

久保建英も頼る「決定力の正体」とは

引退から5年が経つ現在の活動として、指導者ライセンスを取得し、育成年代の指導に携わっていることを報告。その中で、日本サッカー界の至宝・久保建英選手から直接指導を依頼されたという驚愕の事実が明かされた。

「久保建英選手がカタールワールドカップ前に訪ねてくれて、点をとりたいからトレーニングしてほしいっていうことを声かけてくれて、一緒にトレーニングしてっていうのがあったんで」と語り、Jリーグ屈指の点取り屋の理論がトップ選手からも求められていることが判明。

ゴールを量産する秘訣として、「再現性を作るために、その情報を整理して、その人にあった得点の取り方をまずやっぱ作るっていうことがトレーニングで必要」と、自身の哲学の一端を明かした。輝かしいキャリアの裏にあった苦悩と、未来のストライカー育成にかける情熱が垣間見える配信となった。