西鉄「のるーと」社長、同級生と語る誕生秘話

KBCラジオのポッドキャスト番組『金子哲也 バス語り記』にて、未来のバス交通を展望する特集が放送された。ゲストには、西日本鉄道でオンデマンドバス「のるーと」事業を率いる日髙悟氏と、バス路線探検家の沖浜貴彦氏が登場。番組内で二人が高校の同級生だったという驚きの事実が明かされ、和やかな雰囲気の中で次世代モビリティ誕生の裏側が語られることとなった。

西鉄「のるーと」社長とバス探検家は同級生

番組冒頭、パーソナリティの金子哲也からゲスト二人の関係が紹介されると、スタジオは驚きに包まれた。西鉄の未来モビリティ部長とネクスト・モビリティ社長を兼務する日髙氏と、バス路線探検家の沖浜氏が、実は高校の同級生であったのだ。

金子が「お二人今、私の目の前に並んでいただいてるんですが、とても同級生には…」と含みのあるコメントをすると、沖浜氏は「ええっと、それはどう解釈したらよろしいですかね」と応酬。日髙氏も「深く掘るのはやめようと」と笑いを誘うなど、旧知の仲ならではの軽妙なやりとりで番組は幕を開けた。

白紙から始まった「のるーと」構想

話題は本題である次世代モビリティへ。日髙氏は1995年に西鉄へ入社後、最初は路線バスのダイヤを作成する部署に配属されたという経歴を持つ。

そんな日高氏が未来のモビリティ事業に関わるようになったのは2017年からで、オンデマンドバス「のるーと」の構想は、まさにこの時から白紙の状態で始まったのである。

「未来を見据えてなんか打つ手を考えなさいというのが命題でして」と当時のミッションを明かした日髙氏。自動車業界で提唱され始めた「CASE」という概念や、当時から深刻化が見込まれていたバス運転士不足という二つの大きな流れを掛け合わせ、新たな交通サービスの模索を開始した。

その中で、三菱商事からもたらされた海外のAIオンデマンドバスの情報が、本格的な検討へとつながる大きなきっかけであったという。

実現への苦労と全国への広がり

まだ日本に存在しないサービスを実現するため、社内の理解を得るプロセスは容易ではなかったそうだ。上層部への説明材料として、当時ノルウェーで運行されていたAIオンデマンドバスの視察を計画したというエピソードも披露。

「これ悔しいことに別の担当者行っちゃったんですけど。僕行けなかったんですけど」と本音を漏らし、スタジオの笑いを誘う一幕も。苦労の末、2019年4月に福岡市のアイランドシティで運行を開始した「のるーと」だが、当初は運転士の確保に大変苦労したと振り返る。

「見たこともないような乗り物なので、なかなかちょっとわかっていただけない」という状況で、グループ会社に協力を仰ぎ、なんとか8人の運転士を集めてスタートを切ったことを告白した。そんな「のるーと」も、今では全国約60箇所に導入されるまでに成長し、最も遠い導入先は北海道名寄市であるなど、そのシステムの汎用性の高さを示している。

番組の後半では、「のるーと」が自治体からのオファーや、バス事業者の路線代替として活用される例も紹介された。自治体の補助金と組み合わせることで地域の足を維持するモデルとしての可能性も語られるなど、AIを活用したオンデマンドバスが、交通課題を解決する切り札として期待される内容。次回も引き続き、このテーマが深掘りされる予定だ。