日本のヒーローはなぜ職業なのか？日米の違いから徹底考察

ポッドキャスト番組『マンガ760』で、日本のヒーロー作品に頻出する「職業としてのヒーロー」という設定について、日米の作品比較を交えた白熱の議論が展開された。パーソナリティの2人が、「なんで日本のヒーローって金稼がなあかんの？」という素朴な疑問から、両国の文化的な背景や物語構造の違いにまで踏み込んだ。

職業としての日本のヒーロー

番組冒頭、パーソナリティの一人が「アメリカの友達に、なんか日本のヒーローって職業で、仕事としてヒーローをやってるキャラめっちゃ多いやないみたいなことを言われて。なんでなん？って聞かれた時にちょっと困って」と問題を提起した。

確かに、『僕のヒーローアカデミア』や『ワンパンマン』、そして『TIGER & BUNNY』といった人気作では、ヒーローは公的な職業として確立され、報酬を得て生計を立てている。

特に『TIGER & BUNNY』ではヒーローにスポンサーがつくなど、その商業性がリアルに描かれているのが特徴だ。これらは日本のヒーロ―作品における一つの大きな潮流となっている。

慈善事業的な米国のヒーロー

一方、アメリカのヒーロー作品に目を向けると、その在り方は大きく異なっている。バットマンやアイアンマンのように、本人が大企業の社長で慈善事業的に活動するケースや、スパイダーマンのように本業の傍らでヒーロー活動を行うケースが主流であると指摘。彼らの活動はあくまで使命感に基づくもので、直接的な金銭報酬を目的とはしていない。

中には、企業がヒーローを管理し、営利目的で活動する『ザ・ボーイズ』のような作品も存在するが、そこではヒーローの腐敗が描かれており、むしろ「ヒーローの職業化」に対する皮肉が込められている。

生活感と共感が鍵？日本的設定の背景

では、なぜ日本ではヒーローが職業として描かれるのか。一つの考察として「読者の共感性」が挙げられた。

大富豪がヒーローとして活躍する設定に対し、「既に持ってる人らじゃないですか、社長とかって」「元々金持ちみたいになってくると、なんかスタート地点が違ってしまうのかな」と、読者が感情移入しにくい可能性を語った。

さらに、漫画という長期連載メディアの特性にも言及。「漫画やと10巻20巻続いてくると、この人ら生活どうしてんねんやろみたいな、思っちゃうタイミングもあるもんな」と述べ、リアルな生活を描写する上で職業設定は欠かせない要素だと分析した。

日本の作品が得意とする「生活感」の演出が、ヒーローを職業たらしめているという見方もできる。

ヒーロー像と物語構造の根本的な違い

議論はさらに深まり、日米のヒーロー像そのものの違いにまで及んだ。アメリカのヒーローが「組織からの脱却」や「自由」を求めて孤高に戦う姿が描かれがちなのに対し、日本のヒーローは仲間と力を合わせる展開が多いと考察。

「みんなで何かこう大きな流れを作っていくっていうところがクライマックスのとこが多いっていうとこから逆算して、じゃあみんな職業としてやってるよね」と語り、集団性を描くための物語構造上の要請が背景にあると結論付けた。

このヒーロー像の違いは、「ヒーローになりたい」という目標を公言するか否かにも表れている。職業として存在するからこそ日本では「ヒーローになる」が夢として語られる一方、アメリカではヒーローは自称するものではなく、結果としてそう呼ばれる存在であるという違いが浮き彫りとなった。