少年キッズボウイの新曲「氷河期世代の叫びを代弁」と絶賛

放送作家のミラッキ氏が、自身のPodcast番組『ミラッキの帰り道ラジオ』で、7人組バンド「少年キッズボウイ」がリリースした新作アルバム『もっと少年キッズボウイ』について熱弁をふるった。同氏は、収録曲に自身の境遇や世代観を重ね合わせ、その魅力を深く掘り下げて語っている。

「最弱主人公」に重ねた氷河期世代の苦悩

番組内でミラッキ氏は、アルバム収録曲の中でも特に『スペランカー』に強い衝撃を受けたと明かした。曲名は、主人公が史上最弱とされる1980年代のファミリーコンピュータ用ソフトに由来する。彼は「世代の人、『スペランカー』と聞いてね、何か喋りたことがある人はおそらく40代半ば以降であろうと」と述べ、自身がリアルタイム世代の最年少くらいだと分析した。

歌詞には「屍ばっかスペランカー」「足元の死体ですらマイルストーンだろう」といった、ゲームの世界観を反映したフレーズが登場する。しかし、この曲は単なるネタ曲ではないとイラッキ氏は指摘する。特に心を揺さぶられたパンチラインとして「正義っていつでも勝者のための理屈だったから ふてくされてたんだ 被害者のふりして」という一節を挙げ、自身の精神状態と強く共鳴すると語った。

さらに同氏は、就職氷河期世代が抱える見過ごされた苦悩に言及。「働けばどうにかなるっていうレベルじゃない現場、企業っていうところで働かされて、体を壊して精神を壊してっていう、そういう世代がギリギリ爪を引っ掛けてどうにか2025年にたどり着いて」と、自身の世代が直面してきた厳しい現実を吐露。若い世代にも上の世代にも理解されずにきたやるせなさが、『スペランカー』の歌詞の世界観と深く繋がると力説した。

明るいサウンドに乗せた魂のシャウト

この楽曲の特筆すべき点は、シリアスな歌詞とは裏腹に、サウンドが非常に明るいことだとミラッキ氏は語る。そのサウンドは「ちょっともうやけを起こしてるかのよう」でありながら、曲の後半で炸裂する「叫び」が核心だと指摘した。

メインボーカルの後ろで響くしゃがれたシャウトについて、「PENPALSの『TELL ME WHY』以来のやつだなって思ったんですけど。本当にカッスカスで叫んでて、これはライブ終반でやるしかないぞと」と、その切迫感を絶賛。

この叫びは、声を上げることすらできずにきた世代の思いを代弁しているかのようだとし、「なんかそういうことを、代わりに叫んでるっていうか、もう、代わりにって言ってもいいかもしれないな、あの叫び方は。全員分俺が叫んどけよっていう風に聞こえて」と、その表現に感銘を受けた様子を見せた。

小沢健二・真心を彷彿とさせる音楽性

一方で、EPには『スペランカー』とは全く異なる魅力を持つ楽曲も収録されていると紹介。中でも『ムーンライト・レビュー』は「すごくスタイリッシュでおしゃれで、シティを感じる」楽曲であり、「先ほどまで叫んでた人たちが作った曲なんだっていう」とその音楽性の幅広さに驚きを隠さない。

ミラッキ氏は少年キッズボウイの音楽的豊かさを、往年のアーティストになぞらえて表現。「小沢健二とか真心ブラザーズの魂が散って、今活動中のメンバーで言うと7人かな、7人の中に入り込んだかのような」と独特の言い回しで称賛。

さらに『海を見に行く』では、モータウン調のベースラインからラップパートへと展開する変幻自在ぶりを挙げ、バンドのポテンシャルの高さを強調している。

最後に、メンバーがそれぞれ別の仕事を持ちながら音楽活動を続けるスタイルに触れ、「一度きりの人生なんでね、無理のない範囲で、楽しめる範囲で、成立する範囲で、いくつかのことを同時並行でやるっていうのは楽しいよなと」と共感を示した。そして、「特に『スペランカー』の叫びは聴いてもらいたい」とリスナーに強く推薦し、締めくくった。