ゴリけんが熱弁、幕末の料亭を襲った悲劇とは

歴史好きで知られるお笑いタレントのゴリけんが、自身のポッドキャスト番組で「学校の教科書には載ってない歴史」を語る企画を展開。今回は、幕末に繰り広げられた知られざる「おもてなしの戦い」について熱弁を振るった。武器ではなく料理で国の威信をかけた、ある高級料亭の壮絶にして悲しい物語である。

江戸随一の超高級料亭「百川」

物語の舞台は、江戸時代にその名を馳せた一流料亭「百川（ももかわ）」。ゴリけんが「江戸時代のキャナルシティ」と表現するほど、その設えは豪華絢爛を極めていた。客はまず風呂で汗を流し、浴衣に着替えてから席に着くという旅館さながらのサービスが提供されていたという。

食事を楽しむ部屋には美しい切子ガラスが飾られ、中庭にはなんと噴水まであった。料理もまた格別で、鯛の皮だけを絶妙に焼いたものやウニのかまぼこなど、繊細な逸品がガラスの器で供された。その格式の高さから、庶民の記念日から要人の接待まで、幅広く利用されていた高級店であった。

日本の威信をかけた国家プロジェクト

そんな百川にある日、幕府からとんでもない指令が下ることとなる。ゴリけんは「誰を接待しろと言われたでしょうか？」とリスナーに問いかけ、その相手が黒船で来航したペリー提督一行であったことを明かした。

幕府からの命令は「日本国の威信、面目をかけた料理を作れ」という、まさに国家の命運を背負うほどのもの。アメリカに侮られないよう、日本一の料理を用意せよというプレッシャーが、主人である百川茂左衛門の肩に重くのしかかった。

しかも、接待の規模はアメリカ側300人、日本側200人の合計500人分。冷蔵庫もない時代、一人あたり15種類もの器が必要とされたため、用意すべき器の数は7500個にも及ぶ、前代未聞の国家プロジェクトとなった。

1億5000万円を投じた宴の結末

国の未来を託された茂左衛門は、日本の誇りである魚介類をメインに据えることを決断。刺身やヒラメの活き造りなど、持てる技術の粋を集めた献立でこの大一番に挑んだ。ゴリけんによると、この宴会にかかった費用は一人あたり3両、現代の価値で約30万円、総額は「諸説あります」としながらも、なんと1億5000万円にも達したと語る。

しかし、国の威信をかけたこの豪華絢爛な宴は、無惨な結果に終わってしまう。ペリー一行は慣れない箸に苦戦した上、繊細な魚料理にはほとんど手をつけなかったのである。ゴリけんは、その理由を「アメリカ人は甘ったるくて重い味のものが好みだった」ためだと説明。日本の誇る優しい味わいは全く口に合わず、結果は「ほぼほぼ全残し」という歴史的な大失敗であった。

悲劇の料亭を襲った非情な結末

この失敗の代償は、あまりにも大きかった。あれほど江戸で栄華を誇った料亭「百川」は、明治時代以降、歴史の表舞台から忽然と姿を消している。ゴリけんはその理由について、衝撃的な一説を披露した。なんと、結果を出せなかったことを理由に、幕府が1億5000万円もの代金を踏み倒したというのだ。

ゴリけんは「幕府が『お前何してくれたんや』と。『ペリー食えとらんやないか。払わん』っていう風になって…」と、その非情な顛末を語った。この幕府によるまさかの「食い逃げ」が、百川を倒産に追い込んだのではないかと推察。「情報が大事です」「豚で生姜で焼いときゃ勝てたのに」と、歴史から得られる教訓を口にし、この無念の物語を締めくくった。