人気放送作家ミラッキ氏、ポッドキャスト制作の極意を語る

ポッドキャストのポータルサイト「PodcastTimes」が配信する番組『ぽっどでの新人』に、放送作家でラジオパーソナリティの“ミラッキ”こと大村綾人氏がゲスト出演した。数々の人気ラジオ番組を手掛けるプロが、面白い音声コンテンツを生み出すための制作術を明かしている。

放送作家の仕事と「三人寄れば文殊の知恵」

ミラッキ氏はまず、放送作家の主な役割は「台本作成」と「企画・アイデア出し」だと解説。ラジオ番組は通常、パーソナリティ、ディレクター、作家の三位一体で制作されると語る。

この体制の強みについて「三人寄れば文殊の知恵って言葉ありますけど、アイデアにしたって2人だとAとBしか毎回出てこないっていうよりは、Cがあった方がいい」と、多様な視点が番組の質を高める源泉であると力説。

一人の力では生まれない化学反応こそが、プロの現場を支えている実態を明かした。

新人への金言「ファミレスの後ろの席の話を」

音声メディアにおける原稿の役割にも話は及んだ。演者の個性に合わせて原稿の密度を変えるプロの技を明かしつつ、特に初心者に向けた金言を授ける。ミラッキ氏は、新人には「ファミレスで後ろの席でなんか話が盛り上がってる時あるよね」「こっそり聞いてて気になっちゃうような話をしようねって言うとイメージは掴んでくれる」とアドバイスしていることを告白した。

さらに、情報の伝え方として「スイカくらいの大きさかなって言うだけで全然違う」と、抽象的な数字ではなく具体的な比喩を使うことの重要性を強調。聞き手が情景を思い浮かべられるようなトークこそが、人を惹きつけると説いた。

初心者は「結」から書け！逆算の構成術

これからポッドキャストを始めたい人へ、原稿作成の具体的なコツも伝授された。ミラッキ氏が最も重要だと語ったのは、まず「着地点」、つまり話の結論から考えることである。

多くの人が物語の始まりから書こうとする「起承転結」ではなく、「『結』『転』『承』『起』の順で書いといた方がいい」と、プロならではの逆算の構成術を提唱した。

オチから組み立てることで話が脱線せず、時間内に収めることも容易になるという。また、「文字にしてみると、この言葉のチョイス違うとか、表現こういう風にした方がいいなっていうのが可視化される」と、実際に書き出すことで思考が整理され、より良いコンテンツに繋がるというメリットも示した。

自分の中に「ディレクター・作家・演者」を

一人で番組を制作することが多いポッドキャストでは、どのような心構えが必要か。この問いに対し、ミラッキ氏は「自分自身の中にその3人（ディレクター・作家・パーソナリティ）を作るといいんじゃないかなと」とユニークな視点を提示した。

企画を考える「ディレクター」、構成する「作家」、表現する「パーソナリティ」という三つの視点を一人の中で意識し、番組を作っていくことの重要性を説く。自身も裏方から演者へと活動の幅を広げた経験を持つミラッキ氏。面白い人間が自由に発信できるポッドキャストの可能性を、自らの言葉で語った。

そんなミラッキ氏自身も、『ミラッキの帰り道ラジオ』というポッドキャストを配信中だ。そのスタイルは斬新で、仕事帰りやスーパーからの帰り道に、歩きながらスマートフォン一つで収録するというもの。

「そのタイミングで撮れば毎日更新できるんじゃないかな」という発想から生まれたこの番組は、ポッドキャスト開始のハードルを大きく下げてくれる。あえて完璧な情報を求めず、友達との会話のようなラフな空気感を大切にしているというミラッキ氏の姿は、誰もが発信者になれる時代の楽しさを体現している。